今年の6月,ベルリンとフランスでの神輿渡御を終えた後,スロベニアを訪れました。
そしてスロベニアの隣,クロアチアへも。
そこで出会った船乗りのブルーノ。
彼はガハハと笑いながら僕の目を見て大切な言葉をくれたのです。
・ブルーノとの出会い
僕をクロアチアの島,ツレス島へ連れて行ってくれたのは空手家のヴィクトル。
彼は小さな自分の船を持ち,度々近くの島へと遊びに行くそうです。
パンツ一丁で海の上で腕立て伏せしたり,時には歌ったり。
「今日は風がいいからエンジンを切ろう」
マストを広げ,風で海を進みます。
ヴィクトルが連れて行ってくれたのは,オパティアという町から約6時間(!)の,ツレス島,小さなプライベートビーチでした。
到着すると,先に船が停まっています。
待っていたのは,真っ黒でふとっちょの船乗り。
彼が,ブルーノでした。
・誰もいないビーチ,5人で囲む火
ブルーノは小さなゴムボートで,僕らの荷物を岸へとつけてくれました。
ヴィクトルとブルーノは船乗り仲間で,いつもこの浜で一緒に過ごしているようです。
僕らは明るい間にテントの準備をしたり,釣りをしたり,潜って何か食べれるものを探したりしていました。
やがて暗くなって来ると,薪を集めて火を起こしました。
本当は,ビーチでは火気厳禁だそうですがブルーノが地元の消防団なので自分で進んで火起こししていました。
彼はたくさんあるビーチをパトロールしたり,夜は船で過ごして監視しているそうです。
「毎日色んな奴らが来るんだ,今日は君たちが来た,出会いは宝物さ」
火を囲みながら,さっき海でとったカニを入れたトマトスープをみんなで回し,カニの身をバリバリかじりながらニコニコ喋っていました。
・ヨーロッパに何しに来たんだ?
大きなペットボトルに入ったビールとブルーノ自慢の黒ワインを飲みながら,僕らはたくさんの話をしました。
「ところで,ヨーロッパへは何しに?」
「お神輿を上げに来ました!」
それから,お神輿って何なのかとか,じいさんが作ったものだとか,色々説明しました。
「僕は日本の祭りを,何とか守って行きたいんです。」
ブルーノは興味深そうに,まだカニをかじっていました。
・船で暮らすブルーノ
「どうだい?ここ,気に入ったろ?」
ブルーノは,オパティアで仕事をしながら、しばしば海へ出るそうです。
僕らが行った時も,10日目の滞在だそう。
そしてヴィクトルは彼の奥さんからさらに1週間分の食料を届けていました。
「俺はここで生まれ,ここで育った。この海が,この島が,好きなんだ。最高の人生さ。」
「日本も海に囲まれた島だろ?きっと日本も美しい場所なんだろうな!よし,約束しよう。」
“I protect my island, so you protect your island"
(僕は自分の国を守っているんだ,だから,お前も自分の島を守ってくれ)
彼はニカッと笑いながら,そう言いました。
彼は自分の暮らす自分の島を愛し,守っている事を誇りに思っています。
でも僕は,そんな風に思っていたかなと少し反省しました。
今の日本に,もしいつかブルーノが来た時,こんなに陽気に迎える事が出来るかな,と思ってしまいました。
自分の暮らす場所を自分たちで大切に守っていること。
誇らしげなブルーノから,僕は改めて日本の事を思いました。