「祭の男」宮田宣也のブログ/明日がもっとスキになる

今,守るべき,つなぐべきこころって何だろう。祭の男,宮田宣也の祭ライフと,祭哲学について。

五年前の奇跡①1200km〜岡山県備前国総社宮例大祭〜

出会いはまさに奇跡だった。

五年前,春になる前まだ肌寒い頃。

銀座。僕は宮司とそこで出会った。

「お神輿上げたいんだ」

宮司は岡山から東京までわざわざ来てくれた。

実はその時神社は約20年前に消失し,先代の宮司が命がけで再建するというタイミングだった。

神社再建。

一度神社が壊れなければまず出会えない瞬間である。

耐用年数500年とも言われる神社、古建築。

その神社再建を祝う竣工祭で、今まで一回も上がったことのない神輿を上げたいという。

僕はすぐに、

「やりましょう」

と言った。

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初めて岡山で神輿が上がった日。たくさんの子供達が参加してくれた

初めて神輿が上がった日から、今年は5年の記念祭となる。

祭は毎年4月29日。

僕らはいつも前日から神社へ行き,神輿を組み立てる段取りとなっている。

昨年修理した神輿。

屋根の部分だけだが,数ヶ月もつくばの工房に預かり手塩にかけた神輿に再開するのはそれだけで楽しみだ。

総社宮の神輿は一番最初の日から関わっていて,特別な思いがある。

27日。祭2日前僕は宮城県、石巻にいた。

白銀神社例大祭。

 僕にとって始まりの神社。

2013年、ここの神輿を修理してから毎年必ず訪れている。

白銀神社のある石巻桑浜から岡山までの距離までは1200kmある。

神輿組み立てのためにはなんとか28日の日中には到着しなければならない。

僕は夜通し走った。

常磐道、首都高、新東名。

これまで何度も往復した道、風景はインプットされていた。

28日。岡山のインターを降りた頃、まだ午前中だった。

前日に宮城にいたとは思えない。

明るく穏やかな岡山は、明日祭を迎える準備の始まる前だった。

「よく来たね」

神社はいつもと変わらない空気が流れていた。

平安時代から守られて来たというこの場所は、穏やかで豊かな場所だ。

むしろ初めて訪れた時よりも気が充実している。

宮司はずっとこの場所を守り育てて来た。

5年前初めて会った時、神社が完成した時からずっと。

今年神社職員に18歳の若者が加わった。

リョウマ、という。

高校を卒業し,この総社宮に就職したという。

その姿は地元のメディアにも取り上げられ、活躍が期待されている。

彼にとって初めての春の例大祭。

自身が勤める神社最大の行事を迎えることになる。

「ワクワクしています」

竹箒を持ち,作務衣姿のリョウマ。

彼は神社とともに生きる道を選んだ。

彼の前で上がる神輿。

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昨年修理された神輿は、より輝きを増していた

明日は担いでくれるという。

どんな風景を彼は見るのか。

僕らが作ってきた神輿のシーンはどう彼に影響するのか。

5周年。短いようで長かった日々は一度ここで評価されることになる。

10代の完成にどう映り、彼にどう影響するのか。

神輿の真価が問われていた。