「祭の男」宮田宣也のブログ/明日がもっとスキになる

今,守るべき,つなぐべきこころって何だろう。祭の男,宮田宣也の祭ライフと,祭哲学について。

祭を愛する人に「祭行きたい」って言わないで

一年に一度のお祭り。

僕お祭りが好きなので,もちろん外へ行ってもお祭の事について聞かれます。

「行ってみたい!」

「お神輿担いでみたい!」

と言ってくれるので,日にちが近づくと連絡するのですが,その後とても悲しくなる事が多いので最近はあまりしません。

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・お祭って単なるエンターテインメントじゃない

 お祭の日は一年に一度,とても楽しい日です。

近づいてくるとソワソワしてきて,祭の事ばっかり考えています。

だけど,その一方で緊張感もあります。

今年も無事成功するかどうか。

しっかり神輿を上げる事が出来るだろうか。

みんな楽しむ事が出来るだろうか。

地元の祭は,地域の人たちがみんなで協力して作り上げる,特別な日なんです。

それは,最高の楽しみであると同時に,僕らにとってはとても責任のある事。

祭が終わるとすぐに,来年の祭に向けて動き始めます。

・祭は先人から受け継いだ約束

 地域の神社のお祭は,数百年,場合によっては千年を超える伝統があるものも珍しくありません。

その一年に一回の伝統を絶やさぬために,先人が命がけで守ってきました。

うちの地元の神輿も,祖父が人生かけて続けてきたものです。

その日一日最高の神輿を上げるためには,残りの364日どうやって振舞うかにかかってきます。

地域の人たちは小さな頃から毎年本当に楽しみにして,ずっと大切に紡いで来たものなのです。

子供から,老人まで。

それぞれの人がそれぞれの思いでその日を迎えます。

・「それでも」続けていく覚悟

 地元の祭を本気で続けている人間は,どんな事があっても祭を続けていかなければいけない宿命と覚悟を背負っています。

地域の祭には,そういった担い手の人たちがいます。

例えば東日本大震災で,町が津波で流されてしまったとしても,「それでも」祭は続けていかねばならない覚悟を持って祭をしているのです。

それは,他地域から参加する人たちにはわからないし,もちろん強要も出来ません。

・「祭行きたい」って言われると本当に嬉しい

 そんなに大切にしている祭だから,「祭行きたい!」と言われると本当に嬉しいんです。

みんなからそう言ってもらえるように,来てくれる人たちが出来るだけ楽しくお神輿を担いで,最高に素晴らしいお祭になるように一生懸命考え,日々行動しています。

一年に一度しかないからこそ,そしてずっとずっと続いて来たから,地元の祭を褒めてもらったり興味をもってもらえる事が何より嬉しい。

それは,一人じゃなくたくさんの紡いで来た気持ちと歴史が評価された事になるからです。

・でも,本当に来れますか?

 だから,「やっぱり行けませんでした」と言われると本当に悲しいです。

僕だけじゃなくて先人の思いや,地域の人たちの顔も見えてしまう。

様々な事情があったにせよ,ご縁を集める事が出来なかった事をとても残念に思います。

僕も今でもとても悲しいです。お祭を本気で愛しているからこそ。

だから,本気でお祭を愛している人の前で「祭行きたい!」って簡単に言わない方がいいです。

僕も最近はあまり気軽に誘わないようにしています。

その年のお祭の日がうまく行くかどうかは,その地域の人たちにとっての一度きりの真剣勝負です。

お祭に行きたいって言ってたのに来れないという「嘘」が,思ったよりその人を傷つけているかも知れません。

そして,その事を町の人たちみんなに伝える事は,とても心苦しいのです。

みんな同じように,お祭を愛しているから。