「結婚式でお神輿を上げたい!」
たまにそんな相談を受けます。
しかし,結婚式に"お神輿"を上げることは,NOです。
お神輿は神様の乗り物で,個人のお祝いに使用することは出来ません。
しかし,神様の乗り物で無かったとしたら。
答えはYESに変わります。
先日,仲間の結婚式でお神輿ならぬ夢輿(むこし)を担ぎ上げてきました。
そもそも神輿とはなんなのか
"神輿"と"御輿"
みこしという言葉には2種類の漢字が当てはめられます。
「神輿」と「御輿」。
ここで使われる輿とは,広辞苑で引いてみると,
意味:人力でかつぐ乗り物。こし。かご。
とあります。
「神輿」の場合は神様を乗せる「輿」。
神社のお祭では,神職により渡御前に儀式が行われ,お神輿の中へと神様をお呼びしています。
一方「御輿」の場合は「輿」全般を言うわけです。
なので,結婚式やイベントなど,神事と関係のないシーンで「神輿」を上げることは出来ませんが,「御輿」を上げることは問題ないわけですね。
神社のお祭以外にて使用されるものは,これに当てはまります。
実際に,昨年行われた横浜市の總持寺の記念渡御行事では,みこしの中には神様ではなく位牌が納められていましたがお寺の行事の際は担ぎ手はみな「輿(こし)」と呼んで神輿と区別しています。
それでは何を乗せたいのか
結婚式で"御輿"を上げることは問題ないことがわかりました。
それでは何を乗せて担ぐのか。
結婚式でおみこしが上がることは,お祭好きな人の間では実はよくあることです。
式場に持ち込まれたおみこしは参列者により担ぎ上げられ,お祝いの雰囲気を盛り上げます。
私が知っている限りでは,一度に7基のおみこしが上がった結婚式がありました。
お祭が盛んな地域では,個人で所有しているおみこしも多く,お祝いの日に集まったようです。
しかし今回は,新郎の要望で,当日の出し物というだけでなく,意味のあるものにしたいという要望がありました。
そこで,神輿ならぬ夢輿(ムコシ)というアイデアが浮かんできたのです。
夢みこしというイベント
今回使用された輿は,数年前新郎が通っていた大学の新しいキャンパスのオープンイベントで使用されたもの。
「夢キャンパス」という名前にちなんで,「夢みこし」と名付けられました。
輿自体は大変簡素なものでしたが,大学に通う生徒たちの夢を短冊に書いてもらい,取り付けられるようにしました。
さらに市民の方にも楽しんで欲しい!という思いから,道ゆく市民の方々にも夢を書いてもらい始めると,たくさんの子供達が溢れんばかりの夢を書いてくれました。
200枚ほど用意した短冊は全て夢で埋まり,夢キャンパスのオープンにふさわしいハレの催しとなりました。
メッセージを絵馬に乗せて
今回の結婚式では,輿に絵馬を飾ることとしました。
絵馬には新郎新婦から参加者へのメッセージが一枚一枚書かれています。
神様を乗せる神輿ではなく,夢輿(むこし)として担ぎ上げられることとなりました。
新郎と,お祭大好きな仲間たちが集まり,会場へと登場することとなったのです。
一緒に担ぎ上げるよろこび
夢輿が登場すると,会場は大盛況でした。
「なんだかすごく元気をもらいました」
おみこしは,誰にでも担ぐことが出来るし,担がなくてもそのリズムにのり,声を合わせ,想いを乗せることが出来ます。
輿をうまく操作することで会場の想いをひとつにし,集約された空気を作ることが出来る装置だとも言えます。
重い物,大切な物に棒をつけてたくさんの人たちで担ぐ,という行為はおそらく旧石器時代から世界中で行われてきたと思いますがお神輿という形で祭に取り入れられ,全国で愛されているのは日本だけでしょう。
お神輿を担いでいると,棒を通じて色んな感情が伝わってきます。
そしてお神輿を美しく,楽しく担ぐには,伝わってきた感情と同調し,もしくは自分自身のエネルギーを流し込み,渾然一体となっていくことが必要なのです。
想いはひとつだから
結婚式では,新郎新婦をお祝いしたいという気持ちは皆同じです。
想いが同じ方向を向いていれば,必ず良いおみこしが上がります。
「おめでとう,幸せになってほしい」
「彼らに最高の結婚式をプレゼントしたい」
新郎新婦のアイデアが形となった素敵な夢輿となりました。
<当日の様子movie>
準備編