「お神輿の中には,一体何が入っているのだろう?」
ある保育園の園児の疑問をきっかけに,都内の保育園へと出張授業をしに行くことになりました。
お神輿を持って
せっかくだから,お神輿持っていきますか〜!さらにせっかくだから,神主さんも呼びましょう!
ということで,せっかくの機会なので,こちらも準備万端で行くことにしました。
同級生の神主も,快諾してくれました。
神様ってなんだろう?
お神輿の中に何が入っているか,その答えは,神様です。
神社が神様の家だとしたら,お神輿は神様の乗り物。
しかし神様という目に見えない「存在」を理解してもらうには,工夫が必要です。
神主さんは,こう説明します。
「みんなが毎日ご飯を食べる事ができるように,元気でいる事ができるように,安心して暮らす事が出来るように,神様はずっと前から,見守ってくれています。」
「一年に一度,お神輿に乗って神社から神様はみんなのところへ来てくれるんです」
しかしなかなか,その意味は伝わりません。
そこにないものを理解するのは,大人でも難しいものです。
大きな声で,「わっしょい!」
「神様のことわかりましたか〜?今日はせっかくなので,お祭りの日みたいに,みんなでわっしょいの練習をしましょう!」
「その前に!実はみんなの近くにも,神様と同じように,毎日毎日みんなのことを考えて,心配して,一生懸命に働いてくれる人がいます!それは誰でしょう〜?」
「先生!」
先生に前に出て来てもらい,
「そうです,それでは今日は,先生に,みんなで大きな声でありがとう!って言いましょう〜!せーの!」
「ありがとう〜!」
「では今度は,そのありがとうの気持ちを乗せて,わっしょい!って言ってみましょう〜!」
「わっしょい!」
そこで,先生に椅子に座って目をつむってもらいました。
「先生にはこれから神様の気持ちになってもらいます。目をつむって,一人一人の子供たちを思い浮かべ,声を聞いてみてください。」
「いいかい!先生に,精一杯大きな声でありがとうの気持ちを伝えるよ!せーの!」
「わっしょい!わっしょい!」
「もっと!元気に!」
「わっしょい!わっしょい!わっしょい!」
だんだんと先生の目に涙が浮かんで来ました。
「先生,今どんな気持ちですか?またこれから,子供達のためにより一層頑張ろうと思いませんでしたか?」
感謝する,ということ
子供たちが大きな声で叫び,先生に思いを届けようと一生懸命になろうとする姿勢は,大きな力を作ります。
それが先生たちのエネルギーに変わって行くし,またそのエネルギーは子供たちに還元されていくはずです。
一年に一度神様が里に降り,たくさんの思いや感謝を乗せることが,それは実は里の人たちの幸せにつながる,祭りという文化の素晴らしい一面です。
エネルギーは循環し,感謝することが自身や故郷の幸せ,豊かさとなる。
お祭りや神社はこういった心とエネルギーの循環を作り出しています。
神様は見えないけれどそこに在り,太古の昔から先人たちの感謝の対象となって来ました。
それはいつしか大きなエネルギーとなり今もなお人々の心と生活を豊かにしてくれています。
お神輿が出来た
僕たちが帰った後,子供たちは自分でお神輿を作り,中には「かみさま」がいます。
わっしょい!わっしょい!と保育園中に子供達の声が響いていたのが印象的でした。
神様という目に見えないけどそこに在る,大切な何かを伝え感じてもらう事について真剣に考えたけれど,大人である僕たちがまず自分自身に問いかけ,その答えを導き出すことが必要だと改めて感じました。
子供たちがこうやってさらに自分で行動し,お祭りの日を楽しみにしてくれること。
それが祭りの未来に貢献していくことだと思います。