「祭の男」宮田宣也のブログ/明日がもっとスキになる

今,守るべき,つなぐべきこころって何だろう。祭の男,宮田宣也の祭ライフと,祭哲学について。

神輿を担ぐ友の右肩①再会〜府中大国魂神社くらやみ祭〜

午前2時半。

祭のあと,出店を片付ける人。

まだ残る食べ物の匂い。

その夜は,いつも独特の雰囲気がある。

大国魂神社との出会い

僕がこの神輿を初めて担ぐことになったのは2年前。

友人から連絡をもらった。

「神輿担ぎに来てくれないか」

学生時代からの仲間で,元ラグビー部。

体格のいい男だ。

その頃から農業を勉強しており,その頃から熱っぽい眼差しだった。

僕が震災支援の活動で南三陸町にいた時も,彼は岩手遠野で活動していて,再会したのは遠野だったのを覚えている。

いつもエネルギッシュで,似た境遇にいた。

今年も連絡をもらい,僕は祭に参加することを決めた。

しかし気がかりだったのは,

「今年は一緒に担げないかもしれない」

との言葉だ。

しばらく体調を崩していることは聞いていたが,まだ回復していないのか。

ただ、僕も数年前アキレス腱を切ってしまい神輿が一切担げなかったこともあった。

彼と一緒に神輿を担ぐことを楽しみにはしていたが,会えるだけでも嬉しい。

僕は参道を進んでいき,本殿に一礼してから待ち合わせ場所である詰所に向かった。

再会

詰所の庭,暗闇。

奥の方にある扉の前に小さな光が見える。

誰か,いる。

近づいてみると友の姿だった。あかりはパソコンの光だ。

「久しぶり」

明るい声は変わらなかったが,暗闇の中でもわかるほど肌が荒れ,目には光がなかった。

とりあえず,僕らは再会を喜んで,衣装を借り,神輿のある方へと移動した。

府中くらやみ祭。

大国魂神社は,武蔵国総社宮,1000年以上も続く祭と言われており,一週間の間様々な神事が行われる。

5月5日に行われる神社でも最も重要な行事であるという例祭では,8基の神輿が集まり,街中に定められた御旅所へと運ばれる。

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御旅所。中には前日運ばれた神輿が鎮座している

この御旅所,全国でも珍しい都市の中にある聖地で,5日の夜にお神輿はこの場所へと運ばれ,6日の朝に神社へと戻されることになる。

深夜3時にはこの御旅所に神輿が集まる。

僕らが担ぐお神輿は,御霊宮というお宮のお神輿で,少し特殊な形をしている。

各お神輿には添え棒がつけられる。

2本の棒では,担ぐための人数が足りないからだろう。

だんだんと集まってくる神輿,そしてそれを先導する大太鼓。

祭の始まり

時間がくると一斉に鳴り響く。

祭の始まりだ,空気が震えるのがわかる。

神輿が,担ぎ上げられた。

鳴り響く太鼓の音,暗闇の中神輿はゆく。

さっきまで眠かった身体は,目を覚ましている。

身体に染み付いた江戸前のリズムは,脳から身体に伝わり神輿と一体になることが出来る。

大きな神輿が,動き始めた。