「祭の男」宮田宣也のブログ/明日がもっとスキになる

今,守るべき,つなぐべきこころって何だろう。祭の男,宮田宣也の祭ライフと,祭哲学について。

「お神輿担いだってちっとも楽しくない!」を知ることから始めよう

 お祭りって楽しいですよね!僕はお神輿担ぐのが大好きです。

しかし,地域の祭りを再生しようとするならば,神輿担いだってちっとも「楽しくない」事を認識する事が最初のステップだと考えます。

それは,どう言う事なのか。考察してみましょう。

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・お祭り=楽しいと言う幻想

 さて,地方の祭り,に限らず高齢化が進んでいる祭りにある多くの誤解は,

「お神輿=楽しい」「祭り=最高の体験」

と言うものです。

確かに,僕もそう思います。お祭り大好き。

しかし,それは万人にとってそうではない。

特に現代,エンターテインメントが氾濫している中で,貴重な休日をお祭りに使うと言うのは,よっぽどのモチベーションがなければ普通の人にはありえないのです。

その誤解が解けなければ,お祭りは捉えられない。

お祭りが何故,楽しいのかと言う事を突き詰めてみなければ,地域の若者を呼んでみたとしても楽しんでいるのは自分たちだけで二度と参加してくれないと言う現象が起き得るわけです。

何故,お祭りが楽しいのか,を理解する必要があります。

・お神輿って重いし肩痛い

特に,お神輿。

お神輿担ぐのって,本当に楽しいですか?

あんなに重いものを,あんなに揺らして,あんなにゆっくり進む。

なんて辛く苦しいのでしょう笑

普通に考えれば,嫌ですよね?お神輿じゃなければ,苦行です。

内緒ですが,僕も最初はあんまり楽しく無かったし,ちょっと嫌いでした。

だけど,実際お神輿担いでいる人たちはみんな楽しそうです。

それは何故か?

・先人との約束

まず,神社のお神輿の場合通常昔からずっと続いているものです。

数十年,数百年に渡り一年に一度行われている。

そのコースや担ぎ方など変化していると思いますが,お神輿が里を回ると言う行為はずっと続く先人との約束です。

そこで代々育った人なら,担ぎ棒には,もしかしたら祖父や父の汗が染みているかもしれない。

地の人でなくても,ご縁があって参加させてもらったこの地域を作り守ってきた人たちの思い出が詰まっている。

先人の思いが詰まったお神輿を担ぎ,時代を感じる事が出来るのはお神輿の特徴かもしれません。

・どうせなら,楽しくやった方がいいでしょ!

 お神輿は,先人との約束である以上,簡単にやめるわけにいきません。

今年はめんどくさいから,いっか!と言う代物じゃない。

でも,重い。痛い。辛い。

もう,どうせやるなら,楽しくやりましょう!!

例えば,ただ担いで運んでるだけじゃ面白くないから,ガンガン揺らしてみましょう。

いつも唄ってる歌を唄ってみましょう。

重そうな人がいたら応援してあげたり,代わってあげるようにしましょう。

笑顔で担ぎましょう。

どうせなら,どんどんお酒飲みましょう。

いつもの仲間と,一緒に担ぎましょう。

と,言う風に,「辛い」事を「楽しく」出来るようにたくさんの工夫がされているんです。

だから,楽しい。

棒に肩入れれば楽しいに決まってるという

「お神輿担ぐ=辛い≠楽しい」の前提を変えなければ,担ぎ手に楽しませて上げることは出来ません。

楽しむ工夫×約束を守るプライド」があることで初めてお神輿は楽しく担ぐ事が出来るのです。

・担ぎ手不足のお祭りの多くの失敗

 以上の事がわからずにただ担ぎ手を集めても,実は担ぎ手は減る一方です。

理由は簡単で,「お神輿担ぐ=辛い」を無理強いしているだけだからです。

辛い事を無理矢理やらせて,楽しかっただろ?

といっても,来年また担ぎたい!とは思わないですよね?

なので地域のせっかく重い腰を上げてきてくれた若者も,お神輿に悪いイメージを持ち,二度と祭りやりたいなんて思わなくなってしまうのです。

自分たちが生きて来た時代と現代は大きく変化しています。

それは若者にも多分に影響を及ぼしています。

何を楽しんでもらえるのか,どうやったら楽しませてあげる事が出来るのか,をもう一度考えてみなければ若者に寄り添うことは出来ません。

「祭りは必ず万人が楽しめる魔法のような行事」という認識を改めることから,次世代への継承を行う事が出来るはずです。

お祭りは,参加している人全てが楽しくなければ成功とは言えませんからね。

・最高に楽しい祭りは自分の街にある

以前ここの記事でも書きましたが

 

最高に楽しいと思えるお祭りは,自分の住む,もしくはご縁のある場所にあるはずなのです。

生まれた場所,育った場所,いつも通る道,良くすれ違う人,いつものお店,昔からの友達,大切にされている神社・・・。

そんな一見特別に思えない事が,とても特別です。

この記事の中でも小学校の前で校歌を歌いながらお神輿を担いでいる様子を紹介しましたが,その風景は,有名な大きなお祭りとかでは再現出来ないのです。

「お神輿担ぐ=楽しい」ではなくて,

どこで,誰と,どうやってお神輿担ぐか。

自分たちが背負っているお神輿はどんなに意味のあるものなのか。

そういった工夫やシチュエーションがお神輿やお祭りを楽しくするのです。

 

宮田宣也