「おみこしって何ですか?」
外国人や、会う人にしょっちゅう聞かれます。
それでは,おみこしとは何なのか。
みなさんは明確な答えを,用意していますか?
神様の乗り物
簡単にいうと,おみこしとは,神様の乗り物です。
神様が乗っている時,「御神輿」と漢字を当て、「神」の「輿」,神様の乗り物を意味します。
普通,御神輿にはご神体が入っていることになっていますが,依代(よりしろ)と言います。
普段神社の本殿に納められているご神体が一年に一度,御神輿に移され,里を歩く場合もありますが,御神体ではなく神様がおりて来るもの、乗り移られるものとして依代
は用意されます。
それはお札や榊,鏡など様々な形を取ります。
神社の本殿に祀られているご神体は通常,神職しか見ることも触ることも出来ないし,普段は神社に鎮座し,参拝者によって心を寄せられています。
ご神体は数年もしくは数十年に一度ご開帳され,人目に晒されることもありますが、極めて見る機会は少なくなっています。
今年は御代がわりの年。ご神体と祀られる三種の神器は,一切外に出ることはありません。
御霊入れ(降神の儀)
御神輿を担ぎ上げる前、神事が行われます。
それは何をしているのかというと、発御祭といって依代に神様をお呼びする(降神)を行なうための祝詞をあげています。
また、祭に参加する人たちのお祓いや、神様をお呼びするためのお供えを上げています。
神事の後、お神酒を頂くのは直会といって一度神様に捧げられた供物を頂くことにより力を授かる、と言った意味があり、神輿を担ぐ前に担ぎ手などに振る舞われます。
みこしは一人じゃ上がらない
神輿職人であり地域の祭のリーダーであった僕の祖父は,みこしの一番の特徴は「一人では上がらない」ことだとよく言っていました。
その意味を,少し考えてみましょう。
おみこしは,まず重い。
そしてその形状から,複数人で担ぎ上げることが想定されています。
つまり,おみこしを担ぐという行動は,自動的に多くの人の協力が必要になるのです。
担ぐ人だけでなく,運営する人,周りで声援を送る人,全てを含めて自動的にたくさんの人たちが力を合わせなければなりません。
そして,そういった人たちの想いは、担ぎ上げられることによりおみこしに集まります。
「おみこしを無事に担ぎ上げる」という共通目的が生まれ,その中央には御神輿があるのです。
充電装置としてのおみこし
さて,僕は「おみこしって何ですか?」
と聞かれた時に,「神様の充電装置」であると答えてみます。
御成敗式目の一文,
「神は人の敬によりて威を増し人は神の徳によりて運を添ふ」
からもわかるように,神社に集まっているのは「たくさんの人の想い」です。
だから,お神輿を上げる,ということは一年に一度,里の人の想いを一気に集めるということと捉えられたりします。
担いでいる人,裏で準備しているお母さん,手を叩いて見守る子供達,声援を送る人。
そういった人たちの想いを一挙に集め,神様(依代)へ人の想いが蓄えられます。
そうしてまた神社へ帰ってくると還御祭が行われ,今度はお還り(昇神)頂きます。
一年に一度,人の想いを充電し,また神社で大切に過ごす。
そうやって数百年,お祭りと神社が維持されているのです。
エネルギーを充填した神様は、また一年ご縁のある人たちを見守ってくださるのでしょう。
お祭りって,おみこしって,何なのか。
もっともっと探っていきたいと思います。
もっと知りたい人は
先日都内の保育園へ神職の同級生と一緒に行っていきました。
「お神輿の中には何が入っているの?」
の園児の疑問に答えています。
お神輿を担ぐということ。その意味について少し深く考察してみました。